血管内皮細胞を無血清培養培地に交換したのち、時間経過とともに出現する浮遊死細胞を集めてDNAを抽出し、terminal transferaseにより^<32>P標識dideoxyATPを用いて3′-end labelingを行い、DNA fragmentationを検出、さらに、血清除去後、subnuclear bodyやクロマチンの濃縮像など、アポートシスに特徴的な所見の出現を形態学的に検討した。さらに、血管内皮細胞から産生されるエンドセリン-1やアドレノメデュリンなどの血管作動性因子が、c-Myc依存性アポートシスを制御するかどうかを調べた。 エンドセリン-1・アドレノメデュリンは血清除去後アポートシスを濃度依存性に抑制した。エンドセリン-1の作用は内皮に発現しているET_B受容体を介して作用していた。また、血管内皮は大量のエンドセリン-1を産生・分泌していた。血管内皮には単一で高親和性のアドレノメデュリン受容体の存在を認めた。また、内皮にはAMmRNA(1.6kb)が発現し、培養上清中にAM様免疫活性を認めた。これらのことから、エンドセリン・アドレノメデュリンがオートクリン/パラクリン因子として、アポートシスの制御に関与しているのではないかとの仮設のもとに、培養上清中に抗ラットエンドセリン抗体・および抗ラットアドレノメデュリン抗体を添加し産生されたエンドセリン・アドレノメデュリンを中和したところ、アポートシスは著明に増加した。 内皮はアドレノメデュリンにより濃度依存性にcAMP産生を増加させた。しかし、アドレノメデュリンのアポートシス抑制効果はcAMP阻害薬(Rp-cAMP)により影響を受けなかった。Forskolin(10^<-5>M)、Prostaglandin I_2(10^<-6>M)はcAMP産生を促進したにもかかわらず、アポートシス抑制作用は示さなかった。アドレノメデュリンのアポートシス抑制作用はそのcAMP産生促進作用と一致しないことから、cAMP以外の情報伝達経路が関与している可能性が考えられた。
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