研究概要 |
これまでに我々は、Ca^<2+>-sensing receptor(CaSR)cDNAをヒト腎よりクローニングし、家族性低カルシウム尿性高カルシウム血症の患者でCaSR遺伝子の変異を同定した。カルシウム代謝から加齢の変化をみると、カルシウムの分布異常と捕えることができる。即ち、骨から動脈にカルシウムが移動するとも考えられる。このカルシウムの異常により骨粗鬆症や動脈硬化が起こることも考えられる。 我々は今回の研究で、動脈硬化症や骨減少症にCa^<2+>-sensing receptor(CaSR)が関与するか否かを検討した。 1)培養ラット大動脈平滑筋細胞A7r5にはCaSR mRNAが存在した。A7r5細胞をPDGF(50ng/ml),TGF-β1(3ng/ml),IL-1α(5ng/ml),IGF-1(10ng-ml),17β estradiol(10^<-8>M)で12hr刺激した後Northern blotを行なったが、mRNA量に変化はなかった。 2)ラット骨芽肉腫細胞UMR-106は骨芽細胞系の細胞である。この細胞にはCaSR mRNAが存在し、骨形成にCaSRが関与していることが考えられた。そこで、UMR-106細胞を10^<-6>〜10^<-10>MのビタミンD3で6hr-24hr刺激したが、mRNA発現量には変化はなかった。UMR-106を36hr Ca^<2+> free mediumで培養後2mMのCaを加えると、6h,12h後CaSR mRNAは約2倍に増加した。UMR-106を17β estradiol(10^<-8>M),TGF-β1(3ng/ml),PDGF(50ng/ml),IL-1α(5ng/ml),IGF-1(10ng/ml),retinoic acid(10^<-6>M),rat PTH(10^<-8>M)で24hr刺激したが、CaSR mRNA量に変化はなかった。 以上のことから、CaSRは大動脈平滑筋細胞や骨芽細胞に発現しているが、種々のサイトカインやホルモンにてもその発現は変化せず、動脈硬化や骨粗鬆症との関連は少ないと考えられた。
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