研究概要 |
糖尿病状態におけるniric oxide(NO)とprostacylcin(PGI2)、cyclic AMP(cAMP)の関係 1)ヒト神経芽細胞腫細胞(SH-SY5Y)を用いて: (1)PGI_2 analogであるberaprost sodium(BPS)、dibuthyryl cAMP(DBC)のnitric oxide(NO)に与える影響高glucose(G)倍地下においては正常G下に比し、NO2+3は約35%cGMPは約45%低下しており、BPS1〜100μM、DBC1〜100μMの投与によりNO2+3、cGMPともに用量・時間依存性に上昇した。これらの薬剤は同時にcAMP含量も上昇させ、protein kinase A阻害剤であるH-89は、これら薬剤によるNO2+3、cGMPの上昇を約50%に抑制した。これらの結果より、BPS、DBC投与によるcAMPの上昇はprotein kinase Aを活性化させ、NO産生を活性化させていると考えられた。 (2)上記条件におけるoubain sensitive Na^+,K^+-ATPase(ATPase)活性に与える影響 高G培地下においてはATPase活性は有意に低下しており、DBC、BPSの投与により有意に上昇した。 またL-arginine(Arg)sodium nitroprusside(SNP)などのNO agonist、donnerの投与により低下したATPase活性の約40%が上昇した。したがってNOはATPase活性にも一部関係しており、BPS、DBCはcAMPを上昇させ、NOを上昇させる、または他の経路を介してATPase活性を賦活化させると考えられた。 (3)外因性NO投与などNOの上昇がPGI_2、cAMPに与える影響 SNP Argの投与によりNOが上昇してもcAMP含量は変化せず、NOはcAMP産生には影響を与えないと考えられた。SNP ArgのPGI2産生に対する影響は現在検討中である。 ラットを用いて: ラット坐骨神経を用いてのSH-SY5Yで行なったものと同様な実験は現在進行中である。 以上のようにnitric oxideは糖尿病性神経障害の成因として重要であり、ラットを用いた実験の結果が明らかになることによりさらにその重要性は増すものと考えられる。 今後free radicalとNO産生の関連、aldose reductase inhibitorのNO産生に与える影響なども検討し、糖尿病性神経障害におけるNOの役割を明らかにする予定である。
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