研究概要 |
脂肪細胞におけるTSH受容体(TSHR)の発現はバセドウ病眼症の成因と深くかかわっていると思われる。我々はマウス3T3-L1細胞を用いてその発現機序を検討した。脂肪細胞の分化はインスリン、デキサメサゾン、IBMX存在下において誘導され、TSHRmRNAは、誘導5日目に発現が確認された。我々は、TSHRmRNAの脂肪細胞と、甲状腺細胞における発現様式との比較を行い以下の結果を得た。 1)脂肪細胞においての転写開始点部位は甲状腺同様に-89から-69に複数個認められた。 2)脂肪細胞におけるTSHRのダウンレギュレーションは新たな蛋白合成を必要とせず、甲状腺と異なりTSH添加後1時間で認められた。 3)脂肪細胞におけるTSHRのダウンレギュレーションはcAMP依存性であった。次に我々は、TSHR上流を用いて分化前後の脂肪細胞核抽出物とインキュベーションしDNAase protection法により 3)-146から-127にプロテクションされる部位を認めた。このことは同部位に存在するcAMP反応エレメントの重要性を示している。 4)さらに我々はcAMP反応エレメントの更に下流にDNAase protection部位を認め、現在その結合蛋白の同定を行っている。 最後に我々は脂肪細胞における分化促進転写因子として、PPARgammaとC/EBPalphaを取り上げこれらのTSHR発現に対する作用を検討した。その結果5)PPARgammaはlipoprotein lipase,aP2などの脂肪分化マーカーと同様にTSHR発現を促進した。 まとめ、TSHR発現は脂肪細胞の分化に深く関わっているものと考えられた。
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