研究概要 |
甲状腺ホルモン(T3)、レチノイン酸(RA)、およびビタミンD等の脂溶性ビタミンの作用は、おもにその核受容体を介して発現される。レチノイドX受容体(RXR)が、甲状腺ホルモン受容体(TR)、レチノイン酸受容体(RAR)、およびビタミンD受容体(VDR)とヘテロニ量体形成し、その標的遺伝子配列への結合特異性を増加せしめ、その作用を増強する事実が発見された。RXRとTR、RAR、VDR受容体間のDNA結合に依存しない蛋白・蛋白相互作用によるヘテロニ量体形成能とそれぞれのリガンドの効果を解析し、多岐にわたるホルモンの生理作用の分子機構を明らかにすることである。蛋白・蛋白相互作用検出システムとして酵母で開発されたTwoハイブリットシステムを用い、リガンド結合領域に存在するDNA非依存性ヘテロニ量体形成能およびリガンドの作用を解析した。また、RAR,VDRさらにオ-ファン(orphan)受容体まで含めた受容体間のヘテロニ量体形成能の検出に発展させ、相互作用を示す受容体の組み合わせについてはCOS1細胞を用いたトランジェントトランスフェクションの系でその生理作用の発現機構を解析した。この酵母を用いたTwoハイブリットシステムをさらに発展させ、受容体と相互作用する新たなる因子をクローニングしている。DNAに結合した核受容体はリガンド結合にともない、基本転写因子複合体による転写活性を調節するが、この分子プロセスにおいて介在する因子(コアクチベータ-またはコサプレッサー)が存在するものと考え解析を続行する計画である。甲状腺ホルモン、レチノイン酸、およびビタミンDの示す多様な生物活性とこれを伝達する核内受容体複合形成の分子機構について解明できるものと考えられる。
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