ビタミンAの誘導体である、all-trans retinoic acid(ATRA)は、近年前骨髄性白血病の分化誘導療法に用いられているが、投与にて高トリグリセライド血症が出現することが知られている。昨年までに我々は、in viv0において肝臓、白色・褐色脂肪組織でのlipogenesisの亢進が酵素レベルで起こっていることを証明し、これがATRAによる高トリグリセライド血症の原因と考えている。今回、我々はin vitroにおけるATRAのlipogenesisへの影響を検討した。 <方法> 体重が150グラム前後の雄のSDラットより肝細胞を潅流法にて単離し、ATRA投与後のトリグリセライド産生量(^3H_2Oのトリグリセライドへの取り込みを測定)、fatty acid synthaseの活性を測定した。また、CHO細胞にlipogenesis調節因子であるS14遺伝子とrctinoic acid receptor α遺伝子をcotransfectし、ATRA投与後のS14遺伝子の活性を測定した。 <結果> 1. ATRA投与後のラット肝細胞におけるトリグリセライド産生量は濃度依存性に減少が認められた。 2. ATRA投与後のラット肝細胞におけるfatty acid synthase活性は不変だった。 3. ATRA投与後のCHO細胞におけるS14遺伝子活性は抑制が認められた。 <まとめ> in vivoの結果とは異なり、in vitroでの肝細胞におけるATRAのlipogenesisへの影響は抑制的なものであった。
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