研究概要 |
1.正常および異常SHP-2の発現細胞株の樹立とインスリンシグナルへの影響 正常SHP2及びdominant negative効果が期待されるSH2領域のみの異常SHP2をHIRc細胞に発現する細胞株を樹立した。正常SHP-2の過剰発現にてインスリン受容体、インスリン受容体によりチロシンリン酸化される細胞内基質(IRS-1やSHC等)のリン酸化状態は変化しなかった。しかし、異常SHP-2を発現する細胞においてはこれらのリン酸化状態は低下し、結果として、P13'キナーゼ系やMAPキナーゼ系の障害が認められた(Ugi S et al.J Biol Chem,1996)。 2.SHP-2の細胞内標的蛋白の検索 SHP-2のインスリンシグナル調節の分子機構を解明するため、SHP-2の標的蛋白の検索を行った。既にインスリン受容体やIRS-1との結合については報告されているが、新たにJanus kinase2というチロシンキナーゼがSHP-2に結合することを見いだした(Maegawa H et al.Biochem Biophys Res Commun,1996)。さらにpp130の未知のチロシンリン酸化蛋白の一つが、Crk-associated substrate(Cas)であることが判明し、Casの機能の調節にSHP-2が関与する可能性を示唆する成績を得ている(Fujita T et al.Diabetes 1997)。 3.異常SHP-2発現トランスジエニックマウスにおけるインスリン抵抗性 トランスジェニックの手法を用いて上記の異常SHP-2を過剰発現するTgマウスを作成し、種々の組織における発現を遺伝子及び蛋白レベルで確認した。その陽性個体において高インスリン血症を認めた(長谷川ら 糖尿病 1997)。さらに、ソマトスタチンを用いた恒常血糖値法によるインスリン感受性試験に行い、同マウス骨格筋におけるインスリン抵抗性を証明した(長谷川ら 分子糖尿病 1997)。現在、その分子機構を検討中である。
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