グレブス病と橋本病は、ともに甲状腺に対する自己免疫応答がその病因であると考えれる。これまでに、グレブス病とHLA-A2およびHLA-DP5の相関および橋本病とHLA-A2およHLA-DR53との相関を明らかにし、さらにHLA-A2のサブタイプで見た場合、グレブス病とA*0206次いでA*0201、橋本病とA*0207次いでA*0201が強い相関を示すことを明らかにした。また、HLA-A2サブタイプに関しては、これらのHLA分子に結合するペプチドのモチーフも明らかにした。そこで、これらの疾患とHLAとの相関および相関するHLAに結合するペプチドのモチーフを利用して、これらの疾患の病因となるペプチドの解明を目的に研究を行った。すでにモチーフが明らかになっているHLA-A2に関して、グレブス病における自己抗原の一つと考えられているTSHレセプターに関してA*0206結合モチーフに合致するペプチドを合成し患者のこれらのペプチドに関する反応性を検討したが有意の反応性を認めず、これらの部位を認識するT細胞のグレブ病への関与は証明できなかった。そこで、ユニバーサルに疾患に関与する抗原ペプチドを解明する新しい方法であるライブラリー法を用いたT細胞エピトープの解析法について検討した。HLA-A2分子に結合するペプチドの長さは9アミノ酸からなることから、9アミノ酸からなるペプチドの全ての組合せを含む20^9種のペプチドミクスチャー、アンカー部位を2カ所固定した20^7種のペプチドミクスチャーおよび20^6種のペプチドミクスチャーを合成し、これらのペプチドの細胞傷害性T細胞(CTL)の誘導能を検討したところ、健常人末梢血リンパ球を用いた解析ではこれらのミクスチャーを用いてCTLの誘導が可能であることが明らかとなり、ライブラリー法による甲状腺組織に浸潤したリンパ球の特異性解析のための基礎となると考えられた。
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