エンドセリン(ET-1)は成熟個体では、血管内皮障害をきたす種々の病態の原因ないし増悪因子であることが示されている。成熟ET-1は中間体のbig ET-1が「エンドセリン変換酵素-1」(ECE-1)によりプロセスされて生成する。big ET-1には殆ど生物活性が認められないため、big ET-1からET-1への変換は生体中でのET作用発現のkey stepと考えられる。本研究では「エンドセリン変換酵素」の構造・活性相関を解析、分子設計コンピュータープログラムによるECE-1の阻害剤開発に必須の基礎的知見を得る。 (1)big ET変換活性を阻害するbig ET誘導体の検索 種々の構造変換を行ったbigET-1誘導体を合成し、ブタ大動脈より精製したET変換酵素(ECE)に対する阻害活性を検討した結果、有意の阻害活性(k1≒10μM)を示す2種類の誘導体を得た。さらにクローニングしたヒトECE-1βを発現ベクターに組み込みCHO-K1細胞にトランスフェクトし、その膜画分に誘導されたECE活性が上記の2種のbigET誘導体で阻害されることを確認した。 (2)ヒトECE-1 cDNAのmutagenesis法による基質認識ドメインの検索 ヒトECE-1βのdeletion mutantを作成、CHO-K1細胞に導入し、ECE活性に及ぼす影響を解析中である。
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