1.オステオポンチンの石灰化に対する影響に関する検討 オステオポンチン(OPN)の石灰化に対する影響を検討するため、ヒト組み換えOPN (Dr.Giachelliより供与)をBVSMCによる石灰化実験系に添加し、細胞層のカルシウム沈着量を測定したところ、石灰化は用量依存的(0.1-1.0mg/well)に促進され、1.0mg/wellではコントロールに比し224%までカルシウム沈着量は増加した。したがって、OPNは血管石灰化に対して促進的に作用することが示唆された。 2.石灰化におけるOPN遺伝子の発現調節機序に関する検討 局所の細胞外リン濃度の上昇がOPNの遺伝子発現を調節している可能性について検討した。培養液中の無機リン濃度を0.5-2.0mMの範囲で変化させたところ、OPNの遺伝子発現は用量依存的に増加した。さらに、EGTAあるいはEHDPにより石灰化を抑制した条件下でも細胞外リン濃度の上昇によりOPNの遺伝子発現は増加した。したがって、細胞外リン濃度がOPNの遺伝子発現を直接調節している可能性が示唆された。 次に、細胞外無機リン濃度によるOPNの発現調節機序に細胞内へのリン輸送が関与しているかどうかについて検討した。細胞外リン濃度を0.125-2.0mMまで変化させたところ、濃度依存的に細胞内へのリン輸送は増加した。また、リン輸送体の阻害剤であるphosphonoformic acid (PFA)(0.1-1.0mM)およびarsenate (0.1-1.0mM)は、用量依存的にリン輸送を阻害し、1.0mMでそれぞれ70%および20%までリン輸送は低下させた。そこで、1mM PFAおよびarsenate存在下でOPNの遺伝子発現を検討したところ、細胞外無機リン濃度の上昇により増加したOPNの遺伝子発現は、PFA添加によりコントロールレベルまで低下した。以上より、細胞外無機リンによるOPN遺伝子の発現調節機序に細胞内へのリン輸送が関与している可能性が示唆された。
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