オステオポンチン(OPN)の血管石灰化に対する作用をウシ血管平滑筋細胞(BVSMC)を用いたin vitroでの石灰化実験系において検討したところ、human recombinant OPNはBVSMCによる石灰化を用量依存的に促進した。したがって、非リン酸化型のOPNは血管石灰化を促進する可能性が示唆された。しかし、リン酸化型OPNは同じ実験系において石灰化を抑制することから、OPNのリン酸化の調節がOPNの血管石灰化に対する作用を規定していると考えられる。OPNはアルカリホスファターゼ(ALP)により脱リン酸化されることからALPがOPNの作用を調節している可能性が考えられる。 石灰化によるBVSMCにおけるOPNの発現調節機序について検討した。BVSMCの石灰化の誘導にβ-glycerophosphate(β-GP)が必要であり、BVSMCにおけるALP活性が必須であることから、ALPがβ-GPを分解し無機リンを遊離するものと考えられる。その結果培養液中の無機リン濃度が上昇し、石灰化が誘導される。そこで、OPNの遺伝子発現の誘導に細胞外リン濃度の上昇が関与しているかどうかについて検討した。BVSMCには細胞外リン濃度の感知機構としてナトリウム依存性リン輸送機構が存在することを証明した。次に、このリン輸送をphosphonoformic acid(PFA)およびArsenateで阻害したところ、細胞外リン濃度の上昇によるOPN遺伝子の誘導が完全に抑制された。したがって、無機リンによるOPN遺伝子の誘導にはBVSMCにおけるナトリウム依存性リン輸送が関与していることが明らかにされた。 無機リンが直接OPN遺伝子の発現を増加させることから、OPN遺伝子のプロモーター領域に無機リンに反応する転写調節配列の探索を行うため、ラットOPN遺伝子のプロモーター領域をクローニングした。現在、このconstructを用いて無機リンに反応するするかどうかを検討中である。
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