[研究目的]肥満体質におけるレプチンとTNFおよび関連サイトカインの役割を明らかにすること。[背景]我々はTNFがインスリン抵抗性を誘発することにより、著しい「やせ」をもたらすとしてきたが、一方では、脂肪細胞におけるTNFの産生が肥満の原因となると提唱されている。[方法](1)遺伝性肥満動物(ob/obマウス、kkA)におけるTNFの発現、外因性TNFの影響、(2)ゴールドチオグルコース満腹中枢破壊肥満マウスにおける外因性TNFの影響、(3)担がんマウスモデルの悪液質におけるTNFおよび関連サイトカインの役割につき検討した。[結果](1)ob/obマウスの体重増加は摂食量と相関した。12週令で体重はコントロールの約2倍、脂肪組織は8〜9倍に増加し、その他の臓器では肝臓以外では有意な変化は見られなかった。ob/obでは、副睾丸脂肪組織と皮下脂肪にTNFのmRNAの発現を認めたが筋肉には見られなかった。ob/-の脂肪組織いは発現は見られなかった。ミニポンプを用いてob/obマウスに全身的にTNFを3日間持続投与すると、コントロールと同様に肥満マウスも明らかな体重の低下が認められた。IL-1でも同様で、体重および摂食量の低下がみられ、脂肪組織重量の減少も認められた。(2)ゴールドチオグルコース肥満マウスでもTNFは体重を減少させた。(3)Colon26担癌マウスモデル(IL-6が体重減少の主要原因とされてい)を用いた金沢大学の松島らとの共同研究では、IL-10の遺伝子導入細胞の移植により、Colon26担癌マウスの体重減少は阻止することができた。[考察]全く異質の2つのモデルを用いた検討により、肥満の主たる原因はTNF、レプチンともに摂食量の制御を介するものであると考えられた。KKAマウスモデルでは、等カロリーにる肥満度の違いを示したが、これにおけるTNFの役割については検討中である。
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