本研究の目的は、IDDMに連鎖する主要疾患感受性遺伝子IDDM1の由来する親の性に注目してゲノムのインプリンティングについて検討しIDDMの示す複雑な遺伝様式を解明することにあった. 平成10年度には、前年度に得られた結果に基づき、後生的な発現の相違を示す遺伝子の同定を試みた.IDDMの病態やimprintingに基づいて発現パターンの異なるB細胞において発現する遺伝子を同定するため、ヒト・インスリノーマの組織より全細胞RNAを抽出し、3'anchorprimer and labeled 5' arbitraryprimerを用いてRT-PCRを行った.標識したプライマーにより得られる産物を電気泳動したところ、膵B細胞内で発現している遺伝子に相当するESTのバンドを多数認めた.これらは同一人の正常膵組織より得られるバンドと対比させることによりIDDMに伴って発現の異なる遺伝子を同定、クローニングする際の貴重なデータベースとなることが判明した.現在、健常組織とのパターンの相違を示すESTについてクローニングを進めていることであるが、今後同様の方法にてインプリンティングを示す、B細胞内で発現する遺伝子も同定することができると考えられた.
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