本研究の目的は、IDDMに連鎖する主要疾患感受性遺伝子IDDMIの由来する親の性に注目してゲノムのインプリンティングについて検討し、IDDMの示す複雑な遺伝様式を解明することにあった. 初年度においては抗GAD抗体陽性のIDDMを発端者にもつ27家系において遺伝解析を行い、IDDMIに連鎖するHLA-DQ領域のDQA1-DQB1ハプロタイプを決定した.その結果、一般人口におけるHLA-DQハプロタイプの民族的な相違にもかかわらず抗GAD抗体陽性のIDDMは欧米白人におけるのと同様にやはりDQA1^*0301-DQB1^*0302に関連を認めた.しかもこのalleleをヘテロに持つ両親を調べたところ、ランダムな伝播頻度に比して母親からは強い連鎖を認めた(p<0.003).ところがこのalleleをヘテロに持つ父親を調べた結果はランダムな伝播頻度に比して有意な連鎖を認めず、母親における頻度と比較して有意に異なる結果であった(p<0.004).これらのことからIDDMの発症にはIDDMI座位における後生的なインプリンティングが関与していることが示唆された. 続く平成10年度には、この結果に基づき後生的な発現の相違を示す遺伝子の同定を試みた.インスリノーマの組織よりRNAを抽出して、3'anchor primer and labeled 5'arbitrary primerを用いてRT-PCRを行った.標識したプライマーにより得られる産物を電気泳動したところ膵B細胞内で発現している遺伝子に相当するESTのバンドを多数認めた.これらは同一人の正常膵組織より得られるバンドと対比させることによりIDDMに伴って発現の異なる遺伝子を同定、クローニングする際の貴重なデータベースとなることが判明した.
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