研究概要 |
IGFおよびIGFBPの病態生理的意義について検討を加え,本年度は以下に示す知見を得た。 1)神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa:AN)における低栄養の指標としてのIGFsおよびIGFBPsに関する検討:低栄養状態では血中IGF-IおよびIGFBP-3が低下し,IGFBP-2が増加することが知られている。今回,AN48例の血中IGF-1,IGF-II,IGFBP-2およびIGFBP-3を測定し(内11例は治療経過中に2回以上測定),栄養状態のパラメーターであるBody Mass Index(BMI)との関係を検討した。ANでは血中IGF-IおよびIGFBP-3は低値でBMIとは正の相関を認め(r=0.54,p<0.001;r=0.42,p<0.001),一方,血中IGFBP-2は高値でBMIとは負の相関を認めた(r=-0.60,p<0.001)。IGF-IIはBMIとは相関しなかった。重回帰分析ではこれらの測定価の中でIGFBP-2がよりBMIと関係することを認めた。これらの成績はIGF-I,IGFBP-2,IGFBP-3はANにおける低栄養の指標となりうるが,IGFBP-2がより良い指標と考えられた。 2)低血糖を呈するIGF-II産生膵外腫瘍(NICTH)でのIGF-II遺伝子のloss of imprinting(LOI)に関する検討:IGF-II遺伝子はgenomic imprintingされているが,ある種の腫瘍でLOIを認め,このLOIがIGF-IIの過剰発現をきたし腫瘍の発育に関与するのではないかと考えられている。そこでIGF-II産生NICTH15例の腫瘍についてIGF-II遺伝子のLOIがあるか否か,PCRを用い,Apalによる断片長多型を解析した。15例中11例がinformative caseであり。この11例中8例にIGF-II遺伝子のLOIを認め,IGF-II過剰産生にLOIの関与が示唆された。
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