本研究では、日本人NIDDM患者を対象に、まず第一にβ3アドレナリン受容体(BAR)遺伝子変異(Trp64Arg)と肥満度、発症年齢、レプチン、PAI-1などとの相関を検討した。次に糖尿病妊婦の妊娠中の体重増加との関連もみた。第二に、インスリン抵抗性への関与が報告されている培養線維芽細胞のPC-1活性とインスリン抵抗性の関連を調べた。 1. BAR遺伝子変異とNIDDM患者の肥満度などの関連:BAR遺伝子変異のないもの(TT)、ヘテロ変異(TA)、ホモ変異(AA)の比率はそれぞれ69、25、6%で、各群間で肥満度、既往最大肥満度、体脂肪比率、糖尿病発症年齢に差はなかった。 2. BAR遺伝子変異とレプチン、PAI-1の関連:血中レプチン値とBMIには男女共に正相関を認めたが、BARの変異の有無によるレプチン、PAI-1の差はなかった。 3. 糖尿病妊婦の妊娠中の体重増加とBAR遺伝子変異:NIDDM妊婦で、妊娠中にBMIが5以上の増加を示したものの頻度は、BAR遺伝子のTT、TA、AAでそれぞれ12.2、19.2、28.6%と、ホモ変異群で体重増加の傾向が大きかった。 4. NIDDM患者における培養皮膚線維芽細胞のPC-1活性の上昇:種々の程度のインスリン抵抗性を示したNIDDM患者の皮膚生検を行い、培養皮膚線維芽細胞のPC-1活性を測定し、健常対照と比較した。NIDDM患者(n=17)のPC-1活性は85.2±33.1nmol/mg/minと健常対照(46.2±12.7)に比べ有意に上昇していた。またインスリン抵抗性の大きい群の方が、PC-1活性が高かった。 5. Werner症候群(WS)におけるPC-1活性:著しいインスリン抵抗性を示したWSの症例について、遺伝子変異を同定するとともに、PC-1活性の上昇を認めた。
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