研究概要 |
我々はこれまでに、オルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症患者のなかには思春期以降に初めて発症する症例があることを報告している。そして本年度新たに32歳で初めて発症した男性OTC欠損症患者の遺伝子解析を行った。この患者の培養皮膚線維芽細胞からジェノッミクDNAを抽出し、成人発症型OTC欠損症によくみられるR40H変異の有無を検討するために、OTC遺伝子第2エクソンのPCR産物を制限酵素Nlalllで消化した結果、R40H変異はないと考えられた。そこで患者剖検肝よりRNAを調整し、RT PCRによりOTC cDNAを作成後、シークエンシングを行ったところ,皮膚線維芽細胞の検討では認められなかったR40H変異を認めた。そこで皮膚線維芽細胞からの結果を確認するとともに、剖検肝より抽出されたDNAを用いて前記RFLPを行ったところR40H変異が観察された。この男性の変異は体細胞レベルでおこった変異である可能性が考えられた。我々はこれまでに北部九州に在住する8例のOTC欠損症患者がR40H変異を有することを確認している。R40H変異を有するOTC欠損症患者がひとたび発症するとその生命予後はきわめて悪い(8例中5例死亡)。しかし、新生児発症例と異なり、子どもをもうけたあとに発症すれば、その変異遺伝子は女児に受け継がれていくことになる。このことがR40H変異を有する患者が多くみられる原因のひとつと考えられる。しかしながらR40H変異は世界中に報告があり、またこの変異はいわゆるCpG islandにあり、変異を起こしやすい部位にあると思われる。今回の結果は。これら2つのことがR40H変異が他の変異に比べても大変多く認められる理由であると考えられた。
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