研究概要 |
ホスファチジルコリン(PC)コアアルデヒドは,粥状硬化巣に存在する過酸化脂質であり,血小板活性化因子(PAF)類似の構造を持つ。1位がエステル結合したアシルPCが過酸化されると,アシルPCコアアルデヒドが生成し,エーテル結合したアルキルPCからは,アルキルPCコアアルデヒドが生成する。2位がアラキドン酸のPCからは,炭素鎖長5(C5)のC5コアアルデヒドが生成し,リノール酸のPCからは,炭素鎖長9のC9コアアルデヒドが生成する。 1-O-hexadecy1-2-(5-oxovaleroyl)GPC(C5アルキルPCコアアルデヒド),1-palmitoy1-2-(5-oxovaleroyl)GPC(C5アシルPCコアアルデヒド),1-palmitoy1-2-(9-oxononanoy1)GPC(C9アシルPCコアアルデヒド)の三種のPCコアアルデヒド標準品を作製し,その血小板凝集能を検討した。 C5アルキルPCコアアルデヒドは,約50nMのED50で,洗浄家兎血小板を凝集させた。1μMのC5アルキルPCコアアルデヒドによる血小板凝集反応は,0.1μMのCV-6209および50μMのBN52021という化学構造の異なる二種のPAF受容体アンタゴニストにより,それぞれ完全に抑制された。C5およびC9アシルPCコアアルデヒドは,10μMでも洗浄血小板を凝集させず,20μMでは溶解させた。1位のエーテル結合の重要性および,PAF受容体アンタゴニストを用いた検討から,C5アルキルPCコアアルデヒドは,PAF受容体を介して血小板を凝集させるものと考えられた。 この結果は,PCコアアルデヒドが,血小板凝集を介して,動脈硬化の進展発症に寄与している可能性を示唆する。さらに,PAF受容体を有する他の血管壁構成細胞に対しても,PCコアアルデヒドが生物活性を有する可能性も示唆している。
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