リポ蛋白糸球体症は日本で発見された新しい疾患であり、その病因がまったく不明であった。我々はこの疾患の特徴であるIII型高脂血症に類似したリポ蛋白像に注目し、III型高脂血症の病因であるアポEの質的異常の分析を行った。その結果、本症の1例にアポEの構造異常(アポEのコドン145番目のアルギニンがプロリンに変異)を見い出し、本症が発見された地名よりアポE Sendai(Arg 145 Pro)と命名した。 また、制限酵素Ddelを用い本変異の有無を検討した所、本症を発症した5例全例に同じ変異を認めた。この結果よりアポE Sendaiが本症の病因であることが明らかとなった。更に家系調査の結果よりアポE Sendaiの保因者でリポ蛋白糸球体症を発症していない例も2例認められた。これらの事実は本疾患の発症にはアポE Sendai以外の因子も関与している事が明らかとなった。現在本症の発症に関与する因子の解明のため大規模な家系調査を実施中である。 同時に腎糸球体の血管に本変異を有するリポ蛋白が蓄積して閉塞する機序の解明のためアポE Sendaiの発現を行っている。当初の計画ではアポEc-DNAをサブクローニング後baculovirus expression systemで行ったがアポE Sendai発現出来ず、大腸菌にトランスフェクションさせる系に変更し変異アポEの発現に成功し、現在精製段階にある。
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