研究概要 |
アポ蛋白A-I(アポA-I)は、抗動脈硬化作用を有する高比重リポ蛋白(HDL)の主要アポ蛋白であり、最も重要な生理的機能は、LCAT(lecithin : cholesterol acyltransferase)活性化とHDLの一員として末梢組織からのコレステロール引き抜き作用である。アポA-I遺伝子変異については世界中で活発に研究されているが、本邦では我々の検出症例が最も多い。しかし、アポA-I欠損症アポA-I Sasebo以外はヘテロ接合体であるため十分な機能解析実験が行えていない。今回の研究では、第一段階として、検出したアポA-I変異体のうちLCATの活性化やコレステロール引き抜きに関係している可能性の高いアポA-I Karatsu(Tyr100→HIS),アポA-I Tsushima(Trp108→Arg),アポA-I Nichinan(Glu235→0)の変異遺伝子をトランスフェクションさせて発現精製することを目標にした。現在までにアポA-Iの正常なc-DNAにSite-directed mutagenesisによりアポA-I Karatsu(Tyr100→His),アポA-I Tsushima(Trp108→Arg),アポA-I Nichinan(Glu235→0)の遺伝子変異を導入を終え、正常リコンビナントアポA-IとアポA-I Nichinan(Glu235→0)をアマシャム社製のpGEX vector systemを用いてJM109にトランスフェクションさせることに成功。リコンビナントアポA-Iはアフィニティカラム吸着法およびカラムクロマトグラフィー等での精製まで終了した。今後、アミノ酸配列の確認を行い、リポ蛋白を再構成し、LCAT活性化能、抗泡沫化作用の比較検討を行い、変異アポA-I遺伝子によるアポA-I機能障害の程度とコレステロール逆転送経路との関係を明らかにする。
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