研究概要 |
ヒト骨肉腫由来骨芽細胞様株細胞Saos-2細胞より軟寒天培養法を用いて副甲状腺ホルモン関連蛋白(PTHrP)を高産生するクローンを6コ得た。このうち、安定してPTHrPを高産生するクローンをE5と名付け、実験を行い以下の結論を得た。 1.細胞数を測定して増殖曲線を作製し、Saos-2細胞とE5細胞間に差のないことを認めた。 2.培養上清中のPTHrPをIRMA法で測定し、E5細胞はSaos-2細胞より約4.6倍高濃度のPTHrPを産生していることを確認した。 3.E5細胞においてPTHrP産生は、対数増殖期(培養10日まで)には増加し(2.4倍)、その後減少した(0.24倍)。 4.PTHrPの産生は10-8M1,25(OH)2D3添加により、増加する傾向が見られ、14及び17日目において有意に増加した(1.9倍,3.2倍)。 5.本細胞におけるPTH/PTHrP受容体の発現をRT-PCRにて確認した。 6.10-8M1,25(OH)2D3添加により、ビタミンD応答配列(VDRE)を用いたレポーター活性が2.6倍に高められ、ビタミンD受容体(VDR)発現ベクターの導入により5.9倍に誘導された。Saos-2細胞では、それぞれ、4.7倍、5.9倍であった。 7.ヒトPTHrP遺伝子プロモーター上のputative negative VDRE(GGGTGAggaaGGGTGT)の機能を検討したところ、Saos-2細胞において抑制反応は見られなかった。 一般に、活性型ビタミンDはnegative VDREを介して、PTHrPの産生を抑制すると考えられ、実際、ラットにおいてPTHrP遺伝子のnegative VDREが報告されている。しかし、ラット胎児長管骨において、ビタミンDによりPTHrP分泌が上昇したとの報告もあり、ビタミンDとPTHrP産生についてはさらに検討する必要がある。
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