ヒト赤芽球系幹細胞の分化に伴うテロメア長とテロメラーゼ活性の推移、およびその実験条件の設定に関する研究を行った結果、以下の点が明かとなり研究成果として報告、もしくは報告中である。1)実験系の確立のために、ヒト抹消血CD34陽性細胞の迅速・効率的、且つ経済的な純化法の開発を行った。純化前のCD14陽性細胞混入率と純化後のCD34陽性細胞純化率が逆相関することを科学的に証明し、CD14陽性細胞除去のためにナイロンファイバー・シリンジを開発し紹介した。さらに、本法を用いたヒト抹消血CD34陽性細胞の大量純化法を開発した。2)ヒトCD34陽性細胞の赤芽球への系特異的分化誘導法を確立し、その初期分化から最終分化(脱核)までの細胞表面抗原の変化、および増殖能の変化を検討した。その結果、チロシンキナーゼ受容体の一種であるHTKが赤芽球系前駆細胞に特異的に発現していること、ヒト赤芽球の脱核にはアクチンフィラメントが関与すること、エリトロポエチンによってJAK-STAT系のシグナル伝達が進行することを明らかにした。3)ヒト抹消血CD34陽性細胞の初期分化をより詳細に検討する目的で、赤芽球系のほか巨核球系への特異的分化誘導システムを開発し報告した。4)これまでの検討をもとにヒト抹消血CD34陽性細胞の赤芽球系特異的分化誘導を行い、赤芽球系前駆細胞の分化にともなうテロメア長の短縮とともに、興味ある現象としてBFU-Eレベルの前駆細胞におけるテロメラーゼ活性の一過性上昇を観察した。これは、細胞株には見られない現象であり、正常造血機構の解析の上で重要な知見であり、現在、継続してその差異の検討を行っている。
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