研究概要 |
造血細胞の増殖分化を調節するIL-3やエリスロポエチン(エポ)等の受容体はJAK2とSTAT5の活性化をもたらすことが明らかにされたが,その活性化の分子機構や増殖シグナル伝達における意義は不明であった.そこで私達は,エポ受容体とJAK2がどのような機構によりSTAT5を特異的に活性化するかを検討し,STAT5はエポ刺激によりチロシンリン酸化されたエポ受容体に一過性に結合することを見出した.この結合は,リン酸化チロシンと特異的な結合能を有するSTAT5のSH2領域と,エポ受容体の344番目等のチロシンとの間の特異的な結合によることが,種々のエポ受容体およびSTAT5の変異体を用いた培養細胞での発現実験やリコンビナント蛋白を用いた結合実験の結果明らかになった(Chin,H.et al.Blood 88:4415-4425,1996).さらに私達は,エポ刺激によりIL-3受容体のβ鎖がチロシンリン酸化を受けSTAT5と結合することや,STAT5の活性化に必要な694番目のチロシンを置換した変異体はIL-3受容体に持続的に結合し,IL-3によるSTAT5の活性化を阻害することを最近見出した(Chin,H.et al.Blood 印刷中).また,私達は,エポ受容体を含めたサイトカイン受容体からの増殖シグナル伝達におけるJAK2の意義を検討する目的で,上皮増殖因子(EGF)受容体の細胞外領域とJAK2チロシンキナーゼ領域との融合体を作成し造血細胞に発現させて検討を行い,JAK2には直接的にSTAT5の活性化と細胞増殖を誘導する能力があることを示し,サイトカイン受容体からのシグナル伝達におけるJAK2・STAT5経路活性化の意義を確定した(Nakamura,N.et al.J Biol Chem 271:19483-19488,1996).
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