まず、高度転移活性を有するRC-K8細胞のサブクローニングを行い、uPAを最も強く発現しているRC-K8細胞株を得た。次いで、ヒューマンサイエンス研究資源バンクから、ウロキナーゼ(uPA)cDNAを含むplasmid(bluescript)SKUK-8を購入した。そのプラスミドから制限酵素でuPA cDNA切り出し、antisense-orientedにpME発現ベクターに組み込んだ。次いで、このプラスミドを今回購入したGene Pulserを用いて電気的にRC-K8細胞にトランスフェクトした。G418を含むRPMI-1640でセレクションし、uPA産生が抑制されたneo-resistant細胞クローンの樹立を行った。約3ヶ月のG418を含むRPMI-1640で培養した結果、uPAの合成発色基質であるS-2444を用いた方法でもまたfibrin zymography法でも uPA活性が認められない細胞株と部分的にuPA産生が抑えられた細胞株が樹立された。現在それらのサブクローン化された細胞株を用い、浸潤能や転移能の検討が行われている。繊維芽細胞由来の細胞外マトリックスをコートしたマトリゲルの培養チャンバーで培養し、マトリゲルを通過した細胞数をMTT法で測定し、試験管内での細胞の浸潤活性を検討した。予備的実験では、残念ながら上記の細胞間で明かな差が得られていない。そこで、現在、免疫不全マウスの腹腔内に、上記の細胞を注入し、適当な時期にサクリファイし、顕微鏡的に臓器浸潤の有無を観察するin vivoでの転移活性を検討する実験を進めている。また、それとは別にcAMP存在下で培養するとRC-K8細胞のuPAの産生能の低下することが解っており、このcAMP処理RC-K8細胞の浸潤、転移能の検討も平行して行っている。
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