平成10年1月富山医科薬科大学医学部から岡山大学医学部へ移籍したが、引き続き、上記の課題研究を進めている。平成8、9年で用いたプラスミドに変えて、uPA遺伝子の蛋白翻訳開始部位から540bpの塩基部位をantisense-orientedにPCIベクターに組み込んだプラスミドを用い、uPA産生抑制細胞クローンの樹立を試みた。ハイグロマイシン耐性遺伝子を組み込んだプラスミドといっしょにアンチセンスプラスミドを、uPAを産生し高度転移活性を有するRC-K8ヒト悪性リンパ種細胞株にelectropolation法にて遺伝子導入し、ハイグロマイシンを含むRPMI-1640培養液で培養し、アンチセンス遺伝子導入細胞を樹立した。その結果、コントロールベクターに比して約50%にその産生が低下したRC-8細胞クローンが数個得られたが完全にuPA産生が抑制された細胞クローンは得られなかった。そのuPA産生の低下した細胞の浸潤能をマトリゲルチャンバーを用いて検討したが、parent細胞と間に有意の差を見つけることができなかった。この結果は、前回(平成8、9年)の実験でクローン化され、得られたアンチセンス導入細胞のものと同じであった。以上のことから、部分的にuPA産生が抑制された細胞では、少なくともマトリゲルチャンバーを用いた実験系での浸潤活性は、parent細胞と変わらないことが判明した。しかし、未だ十分にuPA産生が抑制された細胞クローンが得られておらず、本研究の結論を出すには至っていない。より強くuPA産生を抑制したRC-K8細胞を樹立するために、アンチセンスベクターの設計と、selectionおよびsubcloningの段階で工夫が必要と考えられ、現在2種類のアンチセンスベクターを用い、ハイグロマイシンの濃度やlimiting dilutionに注意しながら、実験を進めている。
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