研究概要 |
Ryu-2-30-27抗体を用いて精製したヒトRyudocan分子は、コア蛋白サイズが約30kDaでGAG糖鎖としてヘパラン硫酸をもつHSPGであることが確認された。Ligandスクリーニングの結果、精製Ryudocan分子はそのヘパラン糖鎖を介してbFGF、midkine(MK)およびTissue Factor Pathway Inhibitor(TFPI)に強い親和性(それぞれKd=0.5,0.3,0.74nM)をもつことが判明した。また、免疫組織学的解析では、動脈硬化巣、末梢神経線維束、胎盤絨毛上皮細胞や、胎児の肺微小血管、心内膜にも明らかな発現が見られ、RyudocanがbFGFを介して細胞増殖や動脈硬化あるいは血管新生、MKを介して末梢神経系のネットワーク形成、さらにはTFPIを介して抗血栓性に深く関与する多機能分子であることが示唆された。一方、全長約23kbのヒトRyudocanゲノム遺伝子解析では、プライマー伸長反応による転写開始点が以前報告したcDNAより3bp、第一ATGより43bp上流から転写が開始されることが判明し、5'-flanking領域の検索では転写開始点の25bp上流にTATA-box様配列の他、様々な転写因子の結合配列の存在が判明した。Luciferase assayによる発現解析から5'-flanking領域のうちEcoRI〜SmaI間にbasicプロモーター、SacI〜EcoRI間にエンハンサー、Sau3AI〜Sac I 間にサイレンサーエレメントがそれぞれ存在することが推測された。ヒトRyudocanは、そのゲノム遺伝子の5'-flanking領域に種々転写因子が結合し、様々な細胞環境の変化に呼応して発現制御が行なわれることが推測され、上述のRyudocanの多様な生物学的機能の制御機構を解明するためにも今後さらに詳細な検討が必要と思われた。
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