発現クローニングによる血小板膜糖蛋白GPIIb-IIIa複合体の細胞内活性化因子の同定

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08671236
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 広島大学
• 研究代表者: 藤本 哲郎 広島大学, 原爆放射能医学研究所, 助手 (00221549)
• 研究分担者: 藤村 欣吾 広島大学, 医学部, 教授 (80034114)
• キーワード: 血小板 / GPIIb-IIIa複合体 / Affinity Modulation / 細胞内ドメイン / 発現クローニング / β3-Endonexin / フィブリノーゲン

研究概要

本研究では血小板糖蛋白質(GP) IIb-IIIa複合体のリガンド親和性を変化させる未知の細胞内活性化因子を同定するための発現クローニングを行った。まずCMK細胞株をトロンボポエチン(TPO)で刺激して分化させた後にライブラリーを作成し、発現ベクターとしてpBK-EFを用いた。一方、pREFを用いたライブラリーでは、基礎実験の段階でB細胞系株Namalwaに導入した後の、プラスミドの細胞質内での維持に難点があったため、平成8年度はまず、pBK-EFのライブラリーをGPIIb-IIIa複合体を発現するCHO細胞に遺伝子導入しスクリーニングを行った。FITCラベルした生成フィブリノーゲンを加えたFlow Cytometerの系にて、より高親和性のGPIIb-IIIa複合体を発現する細胞を集め、そこからHirtの上清よりプラスミドを回収し、この系を繰り返す方法を行った。数回のスクリーニングの後、Flow Cytometerでの著名な蛍光の変化は無かったものの、得られたそれぞれのクローンをピックアップしてシークエンスを行ったところ、そのうちの一つが、ごく最近Yeast Two Hybrid SystemにてGPIIIaと結合する蛋白として報告されたβ3-Endonexinと類似の蛋白であることが判明した。大腸菌の発現システムでリコンビナント蛋白を作成してその抗体を作成すると同時に、発現実験を行って、この蛋白のGPIIb-IIIa複合体の活性化への影響を検討している。平成9年度も引き続きこの実験を発展させる必要があると考えられる。また別のスクリーニングの系として、骨髄CD34陽性細胞をTPO刺激した細胞から微量のmRNAを精製し、PCR増幅にてライブラリーを作成することを試みたが、PCRによりそれぞれのクローンの増幅にかなりの不均衡が見られたため、現在充分な量のcDNAを得るための数のCD34細胞を集めつつあり、平成9年度はこのライブラリーを用いたスクリーニングも行う。

研究成果

• [文献書誌] Fujimoto, T.et al: "Expression and functional characterization of the P-selectin glycoprotein ligand-1 in various cells" Int.J.Hematol.64. 231-239 (1996)
• [文献書誌] Noda, M.et al: "A point mutation in glycoprotein IX coding sequence (Cys73 (TGT) to Tyr (TAT) causes impaired surface expression of GPIb/IX/V complex in two families with Bernard-Soulier syndrome" Thromb.Haemost.76. 874-878 (1996)
• [文献書誌] Shimomura, T.et al: "Oligoclonal accumulation of T cells in peripheral blood from patients with idiopathic thrombocytopenic purpura" Br.J.Haematol.95. 732-737 (1996)
• [文献書誌] 藤本哲郎 他: "プライム臨床検査 診断指針" 南江堂, 992 (1996)
• [文献書誌] Fujimoto, T.et al: "Blood Coagulation, Fibrinolysis, and Platelets" Springer-Verlag, 228 (1996)