研究概要 |
humanT-cell lymphotropic vilus typcl(HTLV-I)はadultT-cell leukemia(ATL)や痙性脊髄麻痺の病因ウイルスであるばかりでなく、一部のぶどう膜炎、多発性筋炎、関節炎との関連性が注目されている。一方、HTLV-IIは最初hairy cell leukemia患者から分離されたが、疾患との関連性はいまだ明らかでない。近年、HTLV-I,HTLV-II,HTLV(human immunodeficiency virus)の複数感染者の存在が指摘された。そこで、本研究においてはウサギがHTLV-I/HTLV-IIに重複感染するか否かを検討した。その結果、重複感染細胞膜を接種するかまたは重複感染成立ウサギの血液を輸血することにより、ウサギがHTLV-IとHTLV-IIに重複感染することが証明された。しかし、重複感染成立後時間の経過と共に6匹中3匹のウサギで、HTLV-IかHTLV-IIのどちらか一方のウイルスが検出されなくなった。どちらか一方のウイルスに感染したウサギに、他のウイルスを追加接種する方法では、6匹中1匹して重複感染が成立しなかった。恐らく、両ウイルスはそれぞれ異なったリンパ球に感染していると思われるが、同一のリンパ球に両ウイルスが同時感染している可能性は否定できない。HTLV-IとHTLV-IIの重複感染成立後、どちらか一方のウイルスが排除されたり、どちらか一方のウイルスに感染しているウサギが他のウイルスの追加感染に対して抵抗性を示した機序として、両ウイルスに交叉反応する細胞性免疫(cytotoxicT細胞活性や抗体依存性細胞性cytotoxcity)の関与が考えられた。これらの現象は、HTLV-2に感染しているセネガルの娼婦がHIV-Iの追加感染を受けにくいという現象に類似しているかも知れない。重複感染におけるウイルス排除と追加感染阻止の機構を明らかにすることは、これらレトロウイルスの新しい感染予防戦略につながるものと考えられる。
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