研究概要 |
ヒト血清をビオチン標識したG-CSFと孵置した後にnative PAGEで泳動し,ニトロセルロース膜に移したものとperoxidase(PO)標識streptavidinと反応させPOを発色させた.すると,95kDと105kDにバンドが検出された.G-CSFの分子量は約20kDを減じると,75kDと85kDのG-CSFと結合する血清蛋白の存在が考えられた.さらに,抗G-CSFレセプター抗体を用いた実験でもほぼ同じ大きさに2つのバンドを認めた. ヒト好中球系細胞の成熟段階における,可溶性G-CSFレセプターの発現状況をRT-PCR法で検索した.報告されたG-CSFレセプターcDNAはalternative splicingにより7種類有るが,可溶性G-CSFレセプターは膜貫通部を欠いたII型のcDNAがコードしていると考えられる.膜貫通部を挟むプライマーを用いてRT-PCRを行うと,これは野性型(I型)に比べて,短いバンドとして検出される.ヒト骨髄細胞をセルソーターで成熟段階にしたがい,分離してG-CSFレセプターの膜貫通部を挟むプライマーを用いてRT-PCRを行うと,2つのバンドが検出され,可溶性G-CSFレセプター由来の短いバンドは成熟段階が進行するに従いその割合が増加していた. G-CSFレセプターの体細胞遺伝子は17のエクソンからなり,全体ではないが第15エクソンの大部分が膜貫通部をコードしている.先天性好中球減少疾患者より第15エクソン全体が欠失しているクローンを得た,これらはヒト骨髄性白血病細胞株の多くでも検出出来た.このcDNAを発現ベクターに入れCHO-K1細胞に遺伝子導入し得た. マウス可溶性G-CSFレセプターを試験管内で作用させ,正常G-CSF作用を抑制すること,及びヒト骨髄性白血病細胞の増殖を抑制することを見いだした。
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