動脈平滑筋細胞の増殖におけるGla含有蛋白質およびそのリセプターの作用機序の解析

1997 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08671240
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 津田 博子 九州大学, 医学部, 講師 (30180003)
• 研究分担者: 下川 宏明 九州大学, 医学部, 助教授 (00235681) ; 水野 健作 九州大学, 理学部, 助教授 (70128396)
• キーワード: Protein S / Gas6 / 受容体型チロシンキナーゼ / 動脈平滑筋細胞

研究概要

ラット胸部大動脈より作成した血管平滑筋細胞の初代培養系を用いて、ヒトProtein SおよびラットGas6の増殖作用を検討したが,いずれも単独では増殖活性を示さなかった。しかし、ラットGas6はトロンビンによる増殖を促進した。
受容体との相互作用に関与する機能ドメインを明らかにする目的で、N末端側およびC末端側の一部を欠如した変異Protein S分子をHEK293cellに発現させた。また、warfarin存在下に培養することにより、Gla非含有Protein Sを調製した。同様にして、ラットGas6についてもCHO cellを用いた発現系を構築した。ヒトProtein S分子上の各ドメインに特異的に反応するモノクローン抗体も作成した。
ヒトAxl、ヒトSky、マウスMerの細胞外ドメインとヒトIgG1のFc部位との融合蛋白をCOS-7に発現させて可溶型受容体を調製した。これらの可溶型受容体との結合反応の解析では、ラットGas6はAxl、Sky、Merのいずれとも結合するが、ヒトProtein Sは結合しなかった。なかでも最も強い親和性を示したラットGas6とAxlとの結合は、Gas6の性ホルモン結合グロブリン様ドメインを介しており、Glaドメインがこれを調節することが分かった。Gas6による血管平滑筋細胞の増殖促進作用に、Axl/Sky受容体ファミリーのいずれが関与するかを確認するため、RT-PCR法、Northern blotting法にてAxl、Sky、Merの血管平滑筋細胞での発現を検討中である。
IL-1βをブタ冠動脈外膜側に投与することにより、約2週間後にセロトニン、ヒスタミン、PAF投与により血管攣縮をきたす炎症性増殖性病変を惹起させることができた。この血管攣縮病変の形成に、Protein S、Gas6とAxl/Sky受容体ファミリーとの結合を介したシグナル伝達が関与するかを検討する目的で、これらの分子の病変部位での発現を検討中である。

研究成果

• [文献書誌] Tsuda,H.: "Thrombophilia found in patients with moyamoya disease." Clin.Neurol.Neurosurg.99Suppl2.S229-S233 (1997)
• [文献書誌] Tanabe,K.: "Roles of γ-carboxylation and a sex hormone-binding globulin-likedomain in receptor-binding and in biological activities of Gas6." FEBS Letters.408. 306-310 (1997)
• [文献書誌] Nakano,T.: "Cell adhesion to phosphatidylserine mediated by a product of growth arrest-specific gene6." J.Biol.Chem.272・47. 29411-29414 (1997)
• [文献書誌] Kozai,T.: "Platelet activating factor causes hyperconstriction at the inflammatory coronary lesions in pigs in vivo." Coron.Artery Dis.8・7. 423-432 (1997)
• [文献書誌] Fukumoto,Y.: "Vasculoprotectiverole of inducible nitric oxide synthase at inflammatory coronary lesions inducedby chronic treatment with interleukin-1β in pigs in vivo." Circulation. 96・9. 3104-3111 (1997)
• [文献書誌] Katsumata,N.: "Enhanced myosin light chain phophorylations as acentral mechanism for coronaty artery spas m in a swine model with interleukin-1β." Circulation. 96・12. 4357-4363 (1997)