活性化プロテインC(APC)は、活性型凝固第V、および第VIII因子を不活化することにより凝固系を制御している。この他に、我々は、APCが単球の腫瘍壊死因子(TNF)などのサイトカイン産生を抑制することを報告した。ラットの脊髄圧迫虚血後は、傷害局所でのTNF産生の亢進に引き続き、好中球の集積、さらに、TNFにより活性化された好中球に由来する好中球エラスターゼや活性酸素種による血管内皮細胞傷害が惹起される。また、傷害後24時間で、後肢の運動麻痺が認められる。APCは、傷害局所のTNF産生や好中球集積を抑制した。また、傷害後24時間後の後肢の運動麻痺を軽減した。これらの事実は、APCは、TNF産生を阻害することで、好中球による血管内皮細胞傷害を軽減して、脊髄虚血を抑制することで、後肢の運動麻痺を著明に軽減する可能性を示す。このようなAPCの作用は、その活性中心を不括化したDIP-APCやトロンビン生成の選択的阻害剤であるDEGR-Xaには認められなかった。組織学的にも、損傷後24時間で認められる出血病変もAPC投与で、著明に減少した。損傷後の運動麻痺は、6週目まで認められたが、APC投与群では、損傷後、5週目には回復した。また、APCのこのような治療効果は損傷後30分で、APCを投与しても認められた。 これらの事実は、治療薬剤の少ない脊髄損傷後の運動麻痺に対して、APCは新しい治療薬剤として有用である可能性を示す。
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