好酸球の分化決定に関与する遺伝子を明かにする目的で、本研究を計画し以下の成果を得た。 (1)MBP遺伝子は32kb離れてエクソン1とエクソン9の5´上流域に各々P1及びP2の二つのプロモーター領域が存在するが、好酸球に特異的なプロモーターはP2であり、一方、P1はTrophoblastに特異的なプロモーターであった。 (2)このP2プロモーターは、MBP発現細胞に特異的なプロモーターであった。 (3)P2プロモーターの解析から、-117〜-67bpに促進的なシスエレメントが存在し、その中でGATA結合領域(-76〜-71bp)がMBP遺伝子発現に重要な領域であることが明かになった。 (4)GATA結合領域(-76〜-71bp)には、GATA-1及びGATA-2が結合することがゲルシフトアッセイで明かになった。更に、この領域に対する結合親和性はGATA-1の方がGATA-2に比して高かった。機能的にはGATA-1がMBPプロモーター活性を促進的に増強させ、一方、GATA-2はMBPプロモーター活性に対して競合的に抑制した。 (5)正常ヒト骨髄細胞をIL-5存在下で培養し好酸球へ分化する系において、GATA-1 mRNA発現の増加が認められた。GATA-2 mRNAは好酸球分化において、構成的に発現していた。 (6)GATA結合領域(-76〜-71bp)の7bp上流にC/EBP結合領域が認められた。このC/EBP結合領域には確かにC/EBPβが結合し、transactivation活性が存在することが明らかとなった。 以上の結果から、好酸球分化に関与する転写因子のはGATA-1とC/EBPβであることが明かになった。
|