研究概要 |
血小板の活性化に伴う凝集放出反応については、様々な機構が想定されてきたがなお不明な点が多く残されている。最近、低分子量G蛋白の一つとして知られているADPリボシル化因子(ARF)が細胞内の小胞輸送、エクソサイトーシス等に重要な役割を演じていることが明らかにされた。さらにARFはフォスフォリパーゼD(PLD)を活性化とする因子として同定され、細胞内におけるARF-PLDシグナルが注目されている。本研究では血小板の凝集放出反応におけるARFの役割を明らかにすることを目的とする。 1.血小板におけるARFタンパクの発現および細胞内局在:正常ヒト血小板におけるARFタンパクの発現を一次抗体として抗ARFモノクローナル抗体(Dr.R.A.Kahn Emory Univ.GA.USAより供与)を用いてウエスタンブロット法で検討し、その発現を確認した。2.血小板におけるPL活性:血小板におけるPLD活性はBrownら(Cell,75,1137-1144,1993)の方法に準じて測定した。即ち、細胞を可溶化し、ホスファチジルエタノールアミン(PE),4,5ホスファチジルビスホスフェート(PIP_2)、ホスファチジルコリン(PC),の混合ミセル中で[^3H]PCを基質として測定した。未刺激の血小板にはGTPγSの添加により促進されるPLD活性が存在した。血小板膜分画に存在するPLD活性はARFおよびGTPγSの添加により促進され、ARF依存性のPLDが存在すると考えられた。 今後の検討:血小板の各種アゴニストとして、エピネフリン、ADP、コラーゲン、PAFおよびトロンビンを用いて血小板を刺激し、誘導されるPLD活性を検討する。さらに免疫電顕法により局在を検討する。ARF inhibitorによるPLD活性、PA生成、凝集放出反応への影響を調べARFの血小板活性化における役割を明らかにする。
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