血小板の活性化に伴う凝集放出反応については、様々な機構が想定されてきたが、なお不明な点が多く残されている。本研究では細胞内の小胞輸送、エクソサイトーシス等に重要な役割を担っているADPリボシル化因子(ARF)、フォスフォリパーゼD(PLD)の血小板凝集放出反応における役割を明らかにすることを目的とする。 血小板におけるARFの発現をWestern blotにより確認した。また血小板におけるARF依存性PLDの発現をRT-PCR法により確認した。血小板をADPもしくはコラーゲンで刺激し血小板凝集を惹起することにより血小板におけるARFの活性化([^<35>S]GTPγS結合)は約10倍に増加した。未刺激の血小板膜のPLD活性はGTPγSとARFの添加により約5倍に増加したが、この活性はあらかじめ血小板を凝集素で刺激することにより150%増加した。 ARF-PLDの阻害剤であるBreferdin A(BFA)は、コラーゲンによる血小板凝集を濃度依存性に抑制し、25μM以上の濃度で抑制率約50%を示した。BFAは濃度依存性にコラーゲン刺激によるARFの活性化を阻害し、25μM以上の濃度で約40%に抑制した。またBFAはARF依存性PLDも濃度依存性に阻害し、25μM以上の濃度でPLD活性は約50%に低下した。コラーゲン刺激による血小板放出反応をα顆粒に存在するβトロンボグロブリン(βTG)の放出により検討したところ、25μMのBFAはβTGの放出を約40%抑制した。 以上よりARF-PLDシグナルは血小板機能の活性化、分泌、放出反応に関わっていることが示唆された。
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