研究概要 |
本研究はトロンボポエチン(TPO)の血管内皮細胞と血管平滑筋細胞に及ぼす作用を課題としたが、TPOの血管および血管壁細胞に対する生理学的作用についての報告は現時点でもない。 TPO受容体のmRNAは血管内皮細胞に発現していることは知られているが、その存在意義については未だに不明である。本研究では、初めに血管平滑筋細胞におけるTPO受容体の発現をみることにした。ラット大動脈中膜由来の血管平滑筋細胞を培養し、RNAの抽出後、ラットTPO受容体(mpl)のcDNAプローブを用いてNorthern blot analysisを施行した。その結果、ラット培養血管平滑筋細胞はTPO受容体のmRNAを発現していることが判明した。この事実は新知見と思われる。現在、この結果の確認と解釈のためにラット血管内皮細胞の培養系を確立中である。 さらに、ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞と血管内皮細胞を購入し、Northern blot analysisと抗TPO受容体抗体を用いたWestern blottingを施行しているが、現在のところ一定した結果は得られていない。方法論に問題があると思われる。 TPOの血管壁での一酸化窒素(NO)代謝に関する実験も進行中である。ラットのnitric oxide synthase(NOS)のcDNAプローブ(eNOS,iNOS)もようやく使えるように準備が進んできた。 我々が同時に進めている血管壁代謝に関する研究で、動脈硬化巣における超低比重リポ蛋白(VLDL)受容体の発現を初めて報告した。(Am.J.Pathol.149:1831-1838,1996)。また、脂質代謝におけるGM-CSFとM-CSFのリポ蛋白受容体(VLDL受容体、LDL受容体)に及ぼす作用もまとめた(J.Atheroscler.Thromb.2:76-80,1996)。
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