研究概要 |
クロロキンは、細胞のDNAにintercalationをきたし、またDNA poly meraseを抑制することで知られている。ヒト骨髄性白血病細胞株HL-60にクロロキンを添加培養することによりトルイジンブルーでmetachromasiaを呈する好塩基球系細胞の増加、細胞内ヒスタミンの増加を生化学的に証明し、また電顕により好塩基球に特異的な顆粒をもつ細胞の出現を認めた。さらに、tryptase,chymaseが細胞化学的に検出されず有意のヘパリン、セロトニン量を検出しなかったことから誘導された細胞はmast cellではなく好塩基球であることが判明した。またstaurosporin,H-7などのprotein kinase Cの阻害剤及びgenisteinなどのtyrosine kinaseの阻害剤の添加がクロロキンによる分化を阻害しないことから分化にかかわるsignal transductionにprotein kinase C及びtyrosine kinaseは関与していないことが判明した。一方、クロロキン添加によりHL-60の細胞内pHの一過性上昇とG_2/M期での細胞蓄積を認めた。最近、クロロキンによる分化誘導に耐性となった亜株を樹立した。この耐性株でもクロロキン添加による細胞内pHの緩徐な上昇を認めたがそのパターンは感受性株とやや異なっていた。最近の検討ではK-562やNALM-18,KM-3(リンパ性白血病細胞株)に対してクロロキンは細胞毒性のみを示し、分化を誘導しなかった。 一方、TGF-β1は一般にはHL-60の分化を誘導しないといわれているため、この亜株は特異的である。この亜株にTGF-β1を添加することにより、G_0/G_1phaseに細胞の蓄積を認めた。今後、このシステムを用いて白血病細胞における好塩基球の分化のメカニズムを検討していく予定である。
|