研究概要 |
レチノイドによる白血病細胞の分化、アポトーシス誘導機構を解明する目的で種々のレチノイド受容体特異的agonist及びantagonistを作成し検討した.その結果、骨髄性白血病の分化誘導にはretinoic acid receptor(RAR)αの転写レベルでの活性化が必須であり、またアポトーシス誘導におけるシグナル伝達にはRARαに加えてretinoid X receptor(RXR)の活性化が必要と考えられた.さらに、われわれはレチノイン酸耐性急性前骨髄球性白血病(APL)細胞株(UF-1)を樹立し、ヒトGM-CSFトランスジェニックSCIDマウスに移植したヒトAPLモデルマウスの作成にも世界に先駆けて成功した.これらの細胞株やマウスモデルを用いてレチノイン酸耐性機構を解析したところ、RARαのリガンド結合領域の点突然変異によるリガンドの結合低下に加えて、チトクロームP450,P-糖タンパクなどの誘導による細胞内でのレチノイン酸代謝異常などの様々な原因が存在することが明らかになった.さらに、1,25-dihydroxyvitaminD3はp21,p27などのcyclin dependent kinase cdk)inhibitorの活性化によりレチノイン酸には不応のUF-1細胞を細胞周期G1期に停止させ、顆粒球系細胞へ分化誘導させた.興味深いことにヒ素化合物はUF-1細胞のアポトーシスを誘導し、APLモデルマウスの腫瘍をアポトーシスにより縮小させ、これらの化合物は将来の臨床応用の可能性が示唆された.さらに、differential display法によりUF-1細胞に特異的に発現する4種類の遺伝子の一部塩基配列を同定した.これらの遺伝子は既存の遺伝子との相同性を有さず新たな細胞分化関連遺伝子の可能性を含めてその機能解析を進めている.
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