本年度の検討において我々の得た知見は以下の通りである。 1.メサンギウム細胞において細胞外C1濃度を低下させると24時間後、48時間後のthymidineのDNAへの取り込みが抑制された。 2.プロスタグランディンE2の存在下ではメサンギウム細胞におけるthymidineのDNAへの取り込みが抑制された。 3.インドメサシンの存在下には細胞外細胞外C1濃度低下によるthymidineのDNAへの取り込みの抑制は回復した。 4.cAMP産生を刺激するforskolinの存在下ではメサンギウム細胞におけるthymidineのDNAへの取り込みが抑制された。 5.A-kinaseの阻害剤であるH-89の存在下でも細胞外C1濃度低下によるthymidineのDNAへの取り込みの抑制は回復した。 6.メサンギウム細胞によるcAMPの産生は細胞外C1低下、プロスタグランディンE2存在下、forskolin存在下いずれの場合も増加が見られた。 以上よりメサンギウム細胞において細胞外C1濃度の低下はプロスタグランディン産生、およびそれに続くcAMP産生を介してDNAのthymidineの取り込みを抑制すると我々は結論した。この知見は、メサンギウム細胞の機能の制御にC1がプロスタグランディン・cAMPの代謝の変化を起こすことにより重要な働きを持つとする、従来からの我々の仮説を新たに裏付けるものであるといえる。
|