研究概要 |
我々はこれまでの予備実験により、培養メサンギウム細胞に対する機械的伸展刺激がTGF-β1の遺伝子発現をタイロシンキナーゼ依存性に亢進させることを見いだしている。本年度の研究成果は以下の通りである。 1.機械的伸展刺激は、TGF-β1のみならずTGF-β3のmRNA発現も時間依存性に刺激したが、TGF-β2の発現には影響しなかった。また、伸展刺激はI型コラーゲンだけでなくIV型コラーゲン、フィブロネクチンの遺伝子発現も時間依存性に亢進させ、24時間後のこれらの細胞外基質の発現増加は大部分がTGF-βの発現増加を介することを見いだした(Hirakata M,et al.,Kidney Int,in press)。TGF-βのI型およびII型受容体のmRAN発現も同時に増加していた。伸展刺激によるTGF-β1遺伝子の増加は、タイロシンキナーゼ抑制薬で阻害されるが、予備実験でfocal adhesion kinase,paxillinのほかいくつかの蛋白が機械的伸展刺激によってタイロシンリン酸化されることを確認した。 2.培養メサンギウム細胞に対する機械的進展刺激は、PDGF A鎖およびB鎖のmRNA発現を24時間後に亢進させた(未発表)。さらに、予備実験によると、PDGFの中和抗体存在下では、伸展刺激による細胞外基質およびTGF-β1 mRNAの発現増加はいずれも部分的に抑制された。さらに、PDGF受容体の発現にも影響を与える可能性のが示唆された。このようにメサンギウム細胞において、伸展刺激はTGF-βとPDGFを介して細胞外基質の長期にわたる高い発現レベルを維持している可能性が考えられ、両者の相互作用を中心にさらに検討してゆく予定である。
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