本研究では、腎特異的水チャネルであるAQP2(バゾプレシン感受性水チャネル)と腎に比較的特異的な水チャネルAQP3を中心に機能と発現制御の解析を行った。さらに、新規の水チャネルであるAQP7とAQP8のクローニングにも成功した。以下にこの2年間の研究成果を、水チャネルの種類別に述べる。 1.AQP2 AQP2のチャネル孔は水特異的であり、イオンコンダクタンスを持たないことを示した。さらに臨床医学的研究としてAQP2の遺伝子異常で発症する常染色体劣性遺伝の腎性尿崩症の本邦第1例を報告した。患者は両親のAQP2遺伝子に1箇所ずつ存在する点転移を両方有する複合ヘテロ接合体であった。 2.AQP3 AQP3チャネルが尿細管細胞の血管側膜に局在することを免疫組織化学的に確かめるとともに、脱水によってAQP3mRNAの発現が増加することを示した。さらに、AQP3水チャネルに存在する水銀感受性シスチンの部位を同定するとともに、AQP3の同一のチャネル孔が水とグリセロールを通すことを示した。 3.AQP7 精巣に特に多く発現し、水のみならずグリセロールや尿素に対しても透過性のある新規水チャネルAQP7をクローニングした。AQP7は初めて精巣に存在が確認された水チャネルである。 4.AQP8 AQP7に続いて精巣に発現している2番目の新規水チャネルAQP8をクローニングした。AQP8は肝臓にも多く発現しており、また、機能的には水特異的であることを示した。
|