研究概要 |
糸球体腎炎の進展に深く関与するTGF-〓の発現、活性化の調節機構解析を目的に抗胸腺抗体(ATS)を用いた急性可逆性腎炎、慢性進行性腎炎両モデル及び、ヒト糸球体腎炎におけるTGF-〓1、latent TGF-〓 binding protein(LTBP)、TGF-〓,type I、II、III receptors(T〓RI、T〓RII、T〓RIII)蛋白、mRNA発現の局在、推移を免疫染色、免疫電顕法、in situ hybridization法にて検討した。ラット正常腎ではTGF-〓1蛋白、mRNAは糸球体内皮細胞と遠位尿細管に、T〓RI、T〓RIIは糸球体内皮細胞、ボウマン嚢上皮、遠位尿細管、集合管管腔側に弱い発現が見られ、T〓RIIIはさらに間質にも発現が見られた。さらにLTBP蛋白、mRNAは糸球体上皮細胞、尿細管に発現がみられた。TGF-〓1、LIBP,,T〓RII、T〓RIIIの蛋白、mRNA共に急性可逆性腎炎モデルでは発症第7日に一過性の発現増強を糸球体内皮、糸球体上皮、メサンギウム領域、ボウマン嚢に認めた。慢性進行性モデルでは第14日に、糸球体上皮、ボウマン嚢癒着部、病変糸球体周囲尿細管間質に持続的な強い発現が認められ、LTBPがTGF-〓の活性化、病変局所への保持に関与している可能性が示唆された。第28日にはLTBPの発現は正常群と同等に減少した。慢性進行性腎炎群第14日では糸球体係蹄とボウマン嚢癒着部、細胞繊維性糸球体においてもTGF-βとLTBP蛋白、LTBP mRNAの一致した強発現が認められた。第42、56日ではTGF-β1、T〓RI、T〓RII、T〓RIII、蛋白、mRNA発現は糸球体に加え、尿細管間質においても一致した部位に強い発現が認められた。トリチウムサイミジン、トリチウムプロリンを用いた、両腎炎単離糸球体における外因性TGF-〓1の増殖阻害、細胞外基質産生試験では急性腎炎増殖期ではTGF-〓lに対する増殖阻害作用及び基質産生作用の低下がみとめられ、慢性モデルでは作用の低下はみられなかった。以上より正常群の糸球体ではsmall latent TGF-β complexで分泌されるが腎炎モデルではlarge latent TGF-β complexが分泌されていると考えられ、また糸球体、尿細管間質でのlarge latent TGF-β complex、TβRII、IIIの発現増強の持続が糸球体、間質の繊維化に関与している可能性が示唆された。
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