本研究の目的は腎尿細管間質障害における補体の役割をin vivoの系で明らかにすることであった。そのために我々は補体非依存性蛋白尿のモデルであるアミノヌクレオシド(PAN)腎症をラットに作成した。このモデルではPAN投与後3日目から大量のが蛋白尿が出現し、7日目には尿細管間質に有意に形態学的異常が見られた。このとき、近位尿細管管腔側には補体成分C3と補体活性化の最終産物であるC5b-9の沈着が見られ、また、腎機能で見てもイヌリンクリアランス(糸球体機能を反映)とPAHクリアランス(尿細管機能を反映)が共に低下していた。また、ノーザンブロット法にて、ラットC3、MCP-1、TGF-βのmRNAが有意に増加していることが確認された。このモデルにおいて3日目からコブラ毒因子(CVF)を用いて血清補体を枯渇化させておくと、蛋白尿の程度に変化は見られないが尿細管への補体成分の沈着は見られなくなり、尿細管間質障害の程度も形態学的にも機能的にも有意に改善された。また、mRNAの増加も抑制された。さらにC3レベルで補体活性化を抑制する可溶型にヒトCR1(sCR1)を3日目から投与しても全く同様の結果が得られた。 以上の結果から、本研究計画で得られた成果は次のように要約される。即ち、(1)蛋白尿に伴う尿細管間質障害の成立に尿細管腔での補体の活性化が重要な役割を果たしている、(2)補体活性の制御により蛋白尿による間質尿細管障害を有意に軽減できる。
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