研究概要 |
尿細管に広く分布するPGE受容体サブタイプのEP_3のヒトの遺伝子構造の解析を行った。ヒトのEP_3遺伝子は80kb以上の大きさで10個のエクソンと9個のイントロンより構成されていた。エクソン1とエクソン2の前半部は、全てのEP_3アイソフォームに共通で、第7膜貫通部までを含んでいた。エクソン2の後半部あるいはエクソン3から10までの選択的スプライシングにより生じる組み合わせにより、細胞内C端部の配列が決定されることが判明した。エクソン2,4,6,10にはポリアデニレーション部位が含まれており、ヒトのEP_3lの遺伝子は9種類のmRNAを産生し、その結果8種類のEP_3アイソフォーム蛋白が作製されることが明らかになった。この内、2種類のアイソフォームは全く新しいものであった。転写開始点はATGスタートコドンの227〜231上流であり、360bpの5隣接領域にはTATAbox様配列、GCbox,cis-acting regulatory elementが含まれており、ヒトのEP_3遺伝子の発現調節に関与していると考えられた。 また、糸球体障害に深く関与する単球系、リンパ球系細胞におけるEP_4の発現調節を検討した。PMAの添加により、単球系、B細胞系細胞のEP_4mRNAは増加したが、T細胞系では減少した。また単球系細胞のTHP-1をPMAで処理するとPGE_2結合部位の増加とcAMP産生の増加が認められたが、EP_1,EP_2,EP_3S,IP,DP,受容体の増加は認められなかった。以上よりPGE_2/EP_4が腎臓の免疫調節系に関与し、腎疾患病態に影響を及ぼしていることが明らかになった。
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