研究概要 |
血管透過性亢進因子(VPF/VEGF)は正常腎では糸球体上皮細胞により産生され、血管透過性亢進作用、血管内皮細胞増殖作用、Monocyte/macrophage遊走、活性化作用などを持つ糖蛋白であり、VPF/VEGFでラットの腎臓を灌流すると尿中アルブミン排泄が増加する事が知られている。 我々は、in vitroでヒト培養メサンギウム細胞がVPF/VEGFを産生するpotentialを持ち、その活性化によりVPF/VEGFの産生は亢進することを明らかにした(Kidney Int 44:959-966,1993)。しかし、in vivoでもVPF/VEGFを産生するのか、その産生がどのような病態生理学的な意義を持つのかは依然として明らかではない。そこで我々は、メサンギウム増殖性腎炎(PGN)を中心として腎疾患患者(n=30)および正常腎(生体腎移植ドナー、n=4)を対象とし、その腎生検検体を用いて、1)間接蛍光抗体法、2)cRNAプローブを用いたin situ hybridization 法によりVPF/VEGF産生細胞を同定し、その発現の程度と組織学的所見および臨床所見との関連を検討した。その結果、正常腎やPGN以外の腎疾患では、大半の糸球体は従来報告されているように糸球体上皮細胞にVPF/VEGFを認めた。また、半月体形成性腎炎の半月体部分にはVPF/VEGFの発現は認めなかった。一方、PGNでは、糸球体上皮細胞だけでなくメサンギウム領域にも強いVPF/VEGF蛋白の発現を認め、1)二重染色法による解析で、VPF/VEGF蛋白は、活性化メサンギウム細胞のマーカーであるα-smooth muscle actin(αSMA)蛋白の発現パターンと一部一致し、2)in situ hybridization法でもVPF/VEGF mRNAが陽性の細胞の一部がαSMA蛋白を発現していたことより、活性化メサンギウム細胞もVPF/VEGFを産生していると考えられた。またPGNにおけるメサンギウムVPF/VEGFの発現の程度は、蛋白尿の程度(p<0.05)と有意の相関を認めた。以上により、PGNでは、活性化したメサンギウム細胞もVPG/VEGFを産生し、蛋白尿などの病態に関与している可能性が考えられた。
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