無機リンは、カルシウムと同様に骨の形成や石灰化に必須の成分であり、血中リンレベルの異常は、骨障害をもたらす。これらの調節は主に腎近位尿細管でのリン再吸収システムを構成する高親和性Na/リン輸送担体の活性変化を介して行われている。これまでに家族性低リン血性クル病や良性腫瘍に由来する低リン血症の研究を通じて、リン再吸収システムを阻害する液性因子の存在が知られており、Phosphatonineと命名されている。最近、伴性家族性低リン血性クル病の原因遺伝子の一部が同定され、PEXと呼ばれる蛋白の異常が低リン血症を引き起こす原因であることが明らかにされた。推定されるアミノ酸の一次構造より、PEX蛋白はPhosphatoninの分泌を調節しているプロセシング酵素と推定されているが、全長cDNAはクローニングされていない。本研究は、低リン血症の原因遺伝子がコードするPEX蛋白のクローニングおよびその生理機能の解析と、Phosphatoninの性質を明らかにし、低リン血症発症の分子機構を検討した。PEX遺伝子cDNAをクローニングするため、ヒトおよびマウスDNAライブラリーを作成した。ヒトPEX遺伝子の一部報告されている配列を基に、全長クローンを得た。マウスPEX遺伝子は749個のアミノ酸をコードし、ヒトPEXcDNAと95%の相同性を示した。HypマウスのPEX遺伝子を調べた結果、3′側の欠損が確認された。次に、リン輸送担体遺伝子プロモーター領域をルシフェラーゼ遺伝子上流に結合し、OK細胞に発現させ、これらの阻害活性を指標とした際、Hypマウス血清は明らかに、プロモーター活性を阻害した。よって、これらの血清はPhosphatonun精製するための、よい材料と考えられた。
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