研究概要 |
まず、尿中に排泄されるAVPが、慢性腎不全患者では、杭利尿ホルモンとしてではなく、利尿ホルモンとして働くことを示した論文を発表した(Am.J.Med.Sci.312:195-201,1996)。この論文では、AVPのみならず、エンドセリン、心房性Na利尿ペプチド、レニン、アルドステロンなどの関与も考え、多変量解析により、尿中AVPの重要性を明らかにした。に、V1a受容体の抗体を用いて免疫組織化学的に腎内の局在を明らかにした。V1a受容体蛋白は我々の予想通り、尿細管の血管側膜ではなく、尿細管腔側膜に存在した。免疫染色及びreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)を用いて検討したmRNAは、ヘンレの太い上行脚以降の遠位尿細管に存在した。従来の報告で論争の的であった髄質内層集合尿細管(IMCD)にV1a受容体が存在するのか否かを我々は明らかにした。我々は、IMCDをさらに細かくIMCD1-3に分けて採取し、RT-PCRを行った。その結果、V1a受容体mRNAは、IMCD1には少し発現するものの、IMCD2にはごくわずか発現し、IMCD3には全く発現していないことを明らかにした。従って、集合尿細管では、皮質から髄質にかけて次第に発現が減少していくことが判明した。また、脱水時には、ヘンレの太い上行脚、皮質部集合尿細管(CCD)及びIMCD3において、mRNAの発現が増加することも明らかにした。現在、V1a受容体mRNAの発現調節機構をCCDを用いたin vitroでの検討中である。
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