AVP(抗利尿ホルモン)のV2受容体のin vitroでの遺伝子調節を探るため、単離した髄質内層集合尿細管(IMCD)を用いて、高浸透圧下やAVPあるいはプロスタグランデインE2(PGE2)存在下で3時間incubation後、V2受容体mRNA(V2R-mRNA)をcompetitive PCR法を用いて定量した。NaClやureaによる高浸透圧によりV2R-mRNAは発現増加がみられた。これは、in vivoの脱水によるV2R-mRNAの発現減少とは異なる変化である。AVPそのものによってもV2R-mRNA発現増加がみられた。このin vivoとin vitroの違いを来す原因として、我々は、PGE2に着目した。PGE2は腎の髄質内層で特に産生され、AVPのV2作用を抑制することは知られていたが、それが遺伝子の変化を伴っているか否かは、わかっていない。我々の研究では、PGE2はAVPや高浸透圧によるV2R-mRNAの増加を抑制した。すなわち、正常あるいは脱水状態では、産生されたPGE2がAVP受容体のmRNAのdownregulationに大きく関与している。鎮痛薬によるPGE2産生の阻害がそのdownregulationを乱すことで、水、Na調節の障害を来すと考えられる。慢性腎不全においても、同様の障害が水、Na代謝異常の原因と考えられ、現在、PGE2産生を促進させることで、利尿を惹起することが可能か、さらに検討中である。
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