研究概要 |
我々はバゾプレシン(AVP)やプロスタグランディンE2が、CCDにおいて基底膜側のみならず管腔側から作用し、経上皮輸送を調節していることを既に報告したので、今回、他のホルモンについて管腔側作用の有無を検索した。検討対象ホルモンとして、最近の生化学的、免疫組織化学的研究などで、集合尿細管をtargetとし、且つその管腔側形質膜に受容体の局在が示唆されているアンギオテンシンII(AII)、アデノシン(AD)、プラディキニン(BK)、ドパミン(DA)を選び、単離灌流したウサギCCDの基底膜側、管腔側に投与し、経上皮電位(Vt)の変化をみた。なお各CCDにおいて、管腔側ホルモンに対するVtの反応性が保たれていることを確認するため、管腔側AVP投与を行った。 結果としては、管腔側AVPによるVt過分極の見られるCCDにおいて:AIIは基底膜、管腔側投与ともVt変化を来さなかった。他の3者はいづれも基底膜側投与でVtを脱分極させたが、管腔側投与ではADは作用せず、BK、DAは有意な脱分極をきたした。ただしDAの管腔側作用がいづれのCCDでも見られるのに対しBKのそれは反応のある尿細管と反応しない尿細管があった。 DAの管腔側作用は、基底膜作用がDA2 Antagonistで抑制され、DA2 Agonistで再現されるのと対照的に、DA1 Antagonistで抑制され、DA1 Agonistで再現された。このことから管腔側DAはDA1受容体を介してCCDに作用していると考えられたため、DA1受容体のsecond messengerが作用していることを確認するため、管腔側DA-1投与によるCCDの水透過性の変化を測定したところ軽度であるが有意な水透過性の亢進が得られた。 今回の検索では、BK,DAの管腔側作用が示唆され、CCDの上皮輸送機能調節には、基底膜側(血中)でのホルモン作用のみならず、複数の管腔側(尿中)ホルモンの作用が関与しているものと推定された。特にDAについては既に報告したAVP同様、CCDにおいて基底膜側と管腔側で異なった受容体の存在が示唆された。
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