昨年度は、cis-Diamminedichloroplatinum(CDDP;シスプラチン)をウサギの皮質部集合尿細管(CCD)管腔側から投与するとKchannelを抑制することにより管腔内電位を過分極させることを明らかにした。このときは、灌流液にアミノ酸が加えられていた。しかし、あるとき間違えてアミノ酸を加えない灌流液で行ったところ脱分極が起こった。そこで本年度は、この実験を追試した。灌流液からAlanineを除去して管腔側からCDDP10^<-3>Mを加えると管腔内電位はAlanine存在下とは逆に有意な脱分極を起こした。ここで管腔内に2mMBaCl2(Kchannel blocker)を加えるとAlanine存在下ではCDDPによる過分極を完全に抑制したが、Alanine非存在下ではCDDPによる脱分極をさらに増強した。一方、Alanine非存在下ではCCDP10^<-3>Mを管腔内に投与するとK分泌量を抑制すると同時にNa fluxも低下することが確認され、K channelと同時にNa channleも抑制されていることが明らかになった。このことは、AlanineがCDDPによるNa channel抑制に対し保護的に働いていることを示唆している。 次に、CDDPを溶液(血管側)に加えると形態的変化をともなって細胞障害を起こす。10^<-5>M〜10^<-3>MまでのCDDPを血管側に投与すると濃度依存性にCDDの細胞障害とその後の細胞死を起こした。しかし、灌流液にGlycine、Alanineなどのアミノ酸やtripeptideであるGluthationeを加えるとCDDPによる細胞障害は抑制され、これらの物質はCDDPによる尿細管障害に保護的に働くことが明らかとなり、現在活性酸素の関与も含めその障害発生およびアミノ酸の保護作用の機序を検討中である。
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