研究概要 |
我々は、cis-Diamminedichloroplatium(CDDP;シスプラチン)をウサギの皮質部集合尿細管(CCD)管腔側から投与すると、1)K channelを抑制することにより管腔内電位を過分極させる、2)潅流液からアミノ酸を除去するとCDDPにより管腔内電位は脱分極を起こす、3)管腔側CDDPはK channelと同時にNa channleも抑制する、4)AlanineはCDDPによるNa channel抑制に対し保護的に働いていることを明らかにした。さらに、CDDPを浴液(血管側)に加えると形態的変化を伴って細胞障害を起こすことがわかり、10-5M〜10-3MまでのCDDPを血管側に投与すると濃度依存性にCCDの細胞障害とその後の細胞死を起こした。しかし、灌流液にGlycine、Alanineなどのアミノ酸やtripeptideであるGluthatione(GSH)を加えるとCDDPによる細胞障害は抑制され、これらの物質はCDDPによる尿細管障害に保護的に働くことも明らかにした。 今年度は、GSHおよびGlycineの保護作用の詳細を検討した。GSH synthesis inhibitorであるL-buthionine-S,R-sulfoximine(BSO)、γ-transpeptidase inhibitorであるacivicineを用いた。その結果、1)CDDPによる細胞障害は、GSHおよびGlycineにより完全に抑制される、2)その保護作用に対してBSOは保護作用に影響を与えなかった、3)acivicineはGSHの持つ保護作用を解除したが、Glycineの保護作用には影響を与えないことが明らかとなった。このことから、GSHおよびGlyはCDDPが惹起するCCD障害に対して保護的に作用するが、その機序として、細胞内へのGlycineの取り込みと蓄積が重要であるが、GSHの保護作用は細胞内でGSHがGlycineに変換されて発現することが明らかとなった。
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